多面性について
浅倉秋成さんの「六人の嘘つきな大学生」を読んで、衝撃を受けた。
ミステリー小説だから、事件が起こって犯人はまさかのあの人でっていう路線でももちろん最高。
でもそこに含まれた「人間の多面性」というテーマ(と勝手に思ってる)に号泣した。
「犬を拾ったからいい人。信号無視をしたから悪い人。一面だけを見て人を判断することほど、愚かなことはきっとないのだ。」という文があるけど、まさにそうだなと。
瞬間的に切り取られた一つの場面だけを見たり聞いたりして、その人のことを判断してしまうことがある。
そこで勝手に、いい人だと思ったり 逆に失望したり。
全てをポジティブに解釈できたらハッピーだけど やっぱりそうはいかないもので
一部分だけを見て、どうして分かった気になるんだろう。
そして その背景や意味を理解できずすれ違ったまま、勝手に失望したり傷ついたり。
あの人はなぜあんなことを言うのだろう、なぜあんなことをしたのだろう、と回収されない伏線を残したまま、永遠に離れてしまうこともある。
これは何も 対よく知らない人に限ったことではなくて 十分な信頼関係が築けていても起こり得る話だなと思う。
人それぞれ人生があって どんなことに傷ついてどんなことに悲しくなってどんなことをしたら嬉しいのか 何に幸せを感じるのか 聞いても聞いても足りないくらいだと思うから。
知れば知るほど見えてくる こんな一面もあったのか、がポジティブな発見になればいいけど そうならなかったとき。
まあ いちいちその人の言動の背景に思いを馳せるなんて無理なので。こちらの気分や健康状態によっては 悪い受け取り方をしてしまうこともある。で、軽く失望。でもそれが積み重なったら?
すごく悲しい世界だなと思う。
あれはなんだったんだろう、って謎が解けずに終わった場面や関係、あるなあ と振り返る。
逆もまた然り、なんだろな。あらぬ誤解をうんだまま ある発言、ある行動だけを切り取ってわたしから離れていった人、いるもんな。(遠い目)
King Gnuの「カメレオン」という曲について、
メンバーの常田さんがある記事で
「私たちは怠惰な生き物ですので、ある一面で判断してわかった気になってしまいがちなのですが、そこで零れ落ちた側面もまた、その人の大事な大事な真実だったりもするのです。人間という複雑な生き物を、諦めず理解しようと向き合い続けるそこに愛があるのではと思いこの曲を書き下ろしました。」
とおっしゃっていて共感。もはや同じことおもってる(大変恐縮ですが)
その人がどんな思いでその言動をとるのかなんて本当にわからないことで
知らなくていいことかもしれないし 本心とは裏腹に 見せたいように見せてるのかもしれないけど
やっぱり すれ違って無駄な衝突や別れとなるのだけは
本当に本当に、できることならなければいい。